ウィルスvsヒト幹細胞再生医療

ヒト幹細胞

ウイルス感染症に対し、免疫療法による治療へヒト幹細胞を活かすための研究は以前から進められてきていました。

そもそも身体に備わっている免疫というシステムは、ウイルスなどが体内へ侵入してきた際に異物であるとみなして攻撃し身体を守るためのものです。

免疫に対してウイルスが優勢であると、感染による症状が発症するということになります。そこで、免疫療法は免疫を強化することによってウイルスへ対抗しようというものです。

治療のアプローチ自体には、さまざまなものがあります。

治療について

薬剤を用いるにしても手術を行うにしても、言わば「外部からの助け」によって状態の改善を期待するものであると解釈することができるでしょう。

免疫は直接的に症状へ対処するものではないため、すぐに治療として効果が現れるものではありません。それでも、身体の内部で持続的にウイルスと戦う力は高まります。

ヒト幹細胞もまた、ここで免疫強化へつながる役割を担うのです。

幹細胞のさまざまな細胞へ分化する性質は再生医療にも用いられていて、免疫系が弱まっている状況にあればその再構築へはたらくことが期待されます。

臨床試験が承認された

新型コロナウイルス感染症の治療に関しても、20204月にはアメリカで幹細胞のかかわる臨床試験が承認されました。

具体的には胎盤に含まれている造血幹細胞から免疫細胞であるNK細胞を作成し、治療へ使用した際の有効性について検証するという内容です。

また、すでに進められていた研究に新型コロナウイルスを原因とする疾患が対象として加えられたケースもあります。

株式会社ヘリオスとアメリカのアサシス社では従来から、幹細胞を使用した治療法の開発に取り組んできました。

その対象とされていた症状が「ARDS」、急性呼吸窮迫症候群です。

さまざまな要因によって肺水腫から呼吸不全が引き起こされる状態のことを言い、死亡率が高いために治療では人工呼吸器を使用しての全身管理が不可欠とされています。

新型コロナウイルスによる肺炎もARDSの原因となることから、治験に患者さんが組み入れられることとなったのです。

実際に重症化する症例では集中治療室での治療が必要とされるケースも多く、深刻な状況にもつながっています。

幹細胞を用いた治療で肺の状態が回復するといった試験報告が各所からなされていることで、アメリカにおいては治療を実施する許可が得られたという動きもありました。

まとめ

すでに患者さんの容態が回復したとの報告もあり、ウイルスに対してヒト幹細胞を用いた再生医療は希望の光をもたらすものであることが期待されます。