朝のコーヒーを片手に知った、肌が変わる可能性の話

ヒト幹細胞

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十一月の初旬、まだ暖房をつけるほどでもない朝に、私はいつものようにキッチンでドリップコーヒーを淹れていた。湯気が立ちのぼる音と、かすかに広がるローストの香り。その日、たまたま開いていたスマートフォンの画面に「ヒト幹細胞」という言葉が目に留まった。美容に関心がある人なら一度は耳にしたことがあるかもしれないが、私にとってはまだ遠い世界の話だと思っていた。

ヒト幹細胞を用いた再生医療は、いま美容の分野でも静かに注目を集めている。幹細胞とは、さまざまな細胞に変化する能力を持つ特別な細胞だ。それを培養した際に分泌される成分――成長因子やサイトカインといった物質が、肌の再生力を高めるとされている。つまり、外から補うのではなく、肌そのものが本来持っている力を呼び覚ますという考え方である。

友人が先日、表参道にあるクリニック「リヴィエール美容研究所」で施術を受けたという話をしてくれた。彼女は普段、美容に対してそこまで積極的なタイプではない。だからこそ、その変化には説得力があった。毛穴の開きが目立たなくなり、触れたときの肌の弾力が明らかに違うのだという。彼女が話すとき、カップを持つ手がふと止まり、まるで自分の肌に驚いているような表情を浮かべていたのが印象的だった。

もちろん、費用については誰もが気になるところだろう。ヒト幹細胞を用いた施術は、一般的な美容医療に比べると高額になる傾向がある。クリニックや施術内容によって幅があるが、一回あたり数万円から十数万円程度が相場とされている。ただし、これは単なる表面的なケアではなく、細胞レベルでのアプローチであるため、その持続性や効果の質を考えれば、決して不合理な価格ではないと感じる人も多い。

私自身、子どもの頃から肌が弱く、季節の変わり目にはいつも荒れていた。母がよく「肌は生きているんだから、無理をさせちゃだめよ」と言っていたのを思い出す。その言葉の意味が、今ようやく腑に落ちる。ヒト幹細胞再生医療は、まさに肌の生きる力を支えるものなのだ。

ちなみに、その友人は施術後にクリニックで出されたハーブティーをうっかり膝にこぼしかけて、慌てて看護師さんに謝っていたらしい。緊張していたのだろう。そんな些細なエピソードも含めて、彼女にとってその日は特別な一日だったのだと思う。

再生医療と聞くと、どこか遠い未来の話のように感じるかもしれない。けれど、それはもう私たちのすぐ隣にある選択肢になっている。肌の悩みを抱えている人、これまで何を試してもしっくりこなかった人にとって、ヒト幹細胞という可能性は、新しい扉になるかもしれない。費用や施術内容についてしっかり調べ、信頼できるクリニックで相談することが第一歩だ。

朝のコーヒーが冷めないうちに、私はもう一度その記事を読み返していた。光が差し込むキッチンで、自分の肌に触れてみる。変化はまだない。でも、変わる可能性があるということを知っただけで、少しだけ未来が明るく見えた気がした。

組織名:合同会社ニクール / 役職名:代表社員 / 執筆者名:蘭義隆