プロ野球選手が引退を撤回した、あの注射の話

ヒト幹細胞

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知り合いのトレーナーが言ってたんだけど、最近のトップアスリートって怪我との付き合い方が昔と全然違うらしい。

幹細胞治療っていう言葉、聞いたことある? 私も最初は「なんか美容の話?」って思ってたんだけど、全然違った。これ、スポーツ選手の世界ではもう当たり前になりつつある技術で、簡単に言えば自分の細胞を使って組織を修復させる方法なんだよね。膝とか肘とか、酷使して傷んだ部分に幹細胞を注入すると、そこから新しい組織ができて機能が戻ってくる。魔法みたいな話だけど、実際に結果が出てる。

去年の秋口だったかな、あるプロ野球のピッチャーが肘の靱帯損傷で戦力外通告を受けそうになった時期があって。普通ならトミー・ジョン手術っていう大がかりな再建手術をして、1年以上リハビリに費やすコースなんだけど、彼は幹細胞治療を選んだ。で、驚いたことに数ヶ月後には二軍で投げ始めてた。完全に元通りとまでは言わないけど、少なくとも選手生命は延びた。引退会見の準備までしてたのに、また家族とキャッチボールできるようになったって本人がインタビューで泣いてたのを覚えてる。

私の友達で市民ランナーやってる奴がいるんだけど、そいつがこの前「俺も幹細胞やりたい」って言い出して。いや、お前週末しか走ってないじゃんって突っ込んだら、「でも膝痛いし」って。うん、まあ気持ちはわかるけどさ…。

この治療の面白いところは、自分の脂肪や骨髄から採取した細胞を使うってこと。つまり拒絶反応のリスクがほとんどない。外から何かを入れるんじゃなくて、自分の中にある修復能力を引き出すイメージ。人間の体って本来すごい回復力を持ってるんだけど、年齢とか損傷の程度によってはそれが追いつかない。そこを幹細胞でブーストしてあげるわけ。サッカー選手なんかも膝の軟骨がすり減った時に使ってるし、テニスプレイヤーが肩の腱板損傷から復帰するのにも使われてる。海外だとクリニックの名前まで有名になってて、「ジェネシスメディカルセンター」とか、アスリート御用達の施設がいくつもあるらしい。

ただ、誤解しないでほしいのは、これは魔法の杖じゃないってこと。治療後もリハビリは必要だし、生活習慣の見直しも求められる。細胞を注入したからって次の日からバリバリ動けるわけじゃない。それでも、従来の方法と比べたら体への負担は格段に少ないし、回復までの時間も短縮できる可能性が高い。何より、「もう無理かも」って諦めかけてた人に選択肢を与えてくれるのが大きい。

朝の診察室で、膝に注射器を当てられる瞬間の緊張感。消毒液の冷たさと、かすかに漂うアルコールの匂い。でもその一瞬が、また走れる未来につながってるかもしれないって思うと、不思議な感覚になる。

結局のところ、この技術がどこまで広がるかはまだわからない。アスリートだけのものじゃなくて、普通に生活してる人の膝痛とか腰痛にも応用されていくのかもしれないし、もっと別の可能性が見つかるのかもしれない。

私はただ、諦めなくていい選択肢が増えたっていう事実が、ちょっといいなって思ってる。それだけ。

組織名:合同会社ニクール / 役職名:代表社員 / 執筆者名:蘭義隆