iPS細胞とヒト幹細胞、似てるようで全然違う話

再生医療って聞くと、なんとなく未来っぽい響きがする。
友人が美容クリニックで「ヒト幹細胞コスメ」を勧められたって話をしてきたとき、私は思わず「それってiPS細胞のこと?」って聞き返してしまった。彼女は首を傾げて「違うんじゃない?」と曖昧な返事。そこから気になって調べ始めたんだけど、この二つ、名前は似てるけど中身は驚くほど違っていた。
iPS細胞っていうのは、簡単に言えば「人工的に作られた万能細胞」のこと。山中伸弥教授がノーベル賞を取ったあれだ。皮膚とか血液とかの普通の細胞を、特殊な遺伝子を使って「何にでもなれる状態」まで巻き戻す技術。つまり、時計の針を逆回転させるみたいなイメージ。理論上は心臓の細胞にも神経の細胞にもなれるから、将来的には失われた臓器を再生できるかもしれないって期待されてる。ただ、これがまだ研究段階で、実用化までには安全性の確認とか倫理的な問題とか、クリアしなきゃいけないハードルが山ほどある。
一方で、ヒト幹細胞はもっと身近なところで使われ始めてる。
こっちは「もともと人間の体の中にある幹細胞」を指していて、脂肪や骨髄、臍帯血なんかから採取できる。iPS細胞みたいに遺伝子操作をしないから、比較的安全性が高いとされてる。美容分野では、この幹細胞が分泌する「成長因子」っていう物質に注目が集まってて、肌の再生を促すとか、髪の毛を元気にするとか、そういう使い方がされてる。実際、私が通ってる美容院でも「ヒト幹細胞エキス配合」ってシャンプーを見かけるようになった。ブランド名は忘れたけど、確か「セルリバイブ」とかそんな感じの名前だったと思う。
ここで少し話が逸れるんだけど、私、去年の夏に膝を痛めたことがあって。整形外科に行ったら「軟骨が少しすり減ってますね」って言われて、その時に先生が「将来的には幹細胞治療っていう選択肢もあるかもしれませんよ」って教えてくれた。当時はピンとこなかったけど、今思えばあれはヒト幹細胞を使った再生医療のことだったんだろうな。
で、結局のところ何が違うのかって言うと、「作り方」と「使い方」が全然違う。iPS細胞は研究室で人工的に作られて、将来的には重い病気の根本的な治療に使われる可能性がある。一方、ヒト幹細胞は自然に体内にあるものを利用して、今まさに美容や整形外科の分野で実用化が進んでる。どっちが優れてるとかじゃなくて、目的が違うんだよね。
夜中の三時くらいに論文を読み漁ってたら、ヒト幹細胞治療が変形性膝関節症に効果があったっていう臨床データを見つけた。痛みが軽減したとか、可動域が広がったとか。もちろん個人差はあるだろうし、まだまだデータの蓄積が必要なんだろうけど、可能性を感じずにはいられなかった。部屋の窓から見える街灯の光が妙に明るく感じられて、なんだか希望みたいなものが見えた気がした。
ヒト幹細胞再生医療の魅力って、「今すぐ手が届きそうな未来」ってところにあると思う。iPS細胞みたいに何十年も先の話じゃなくて、もう実際に受けられる治療として存在してる。美容だけじゃなくて、関節の痛みとか、薄毛とか、身近な悩みに対してアプローチできる。しかも自分の体にもともとある細胞を使うから、拒絶反応のリスクが低い。
完璧な治療法なんて存在しないし、過度な期待は禁物だけど…それでも、選択肢が増えるってことは悪くないと思う。
組織名:合同会社ニクール / 役職名:代表社員 / 執筆者名:蘭義隆