去年の夏、母の肌を見て思ったこと

ヒト幹細胞

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母が突然「最近、鏡見るのが怖い」って言い出したのは去年の8月だった。

エアコンの効いたリビングで、母は自分の手の甲をじっと見つめていて。私も隣に座って同じように自分の手を見たんだけど、確かに母の手には細かいシワが増えていた。でも正直、私にはそれがそんなに気になるものなのか、ピンとこなかったんだよね。

ヒト幹細胞って言葉を初めて聞いたのは、その数週間後。母が通い始めたクリニックの話をしてくれた時だった。最初は「幹細胞?なにそれ、理科の授業?」って感じで聞き流していたんだけど、母が説明してくれた内容が意外と面白くて。

人間の体って、実は自分で修復する力を持ってるらしい。傷が治るのも、風邪が治るのも、全部体の中にいる細胞たちが頑張ってくれてるから。で、その中でも特に優秀なのがヒト幹細胞って呼ばれるやつで、これが色んな細胞に変身できる能力を持ってる。まるでポケモンの進化みたいだなって思った。

そういえば高校の時、生物の先生が「iPS細胞」の話をしてたのを思い出す。あの時は眠くて半分寝てたけど…。

老化って結局のところ、細胞の元気がなくなることなんだって。肌のハリがなくなるのも、シミが増えるのも、体が疲れやすくなるのも、全部細胞レベルで起きてる変化の表れ。で、ヒト幹細胞を使った再生医療っていうのは、その弱った細胞に「もう一回頑張ってみない?」って声をかけるような感じらしい。

母が通ってるクリニックは駅前の小さなビルの3階にあって、待合室にはいつもラベンダーの香りが漂ってる。私も一度だけ付き添いで行ったことがあるんだけど、思ってたより普通のクリニックで拍子抜けした。白衣を着た先生が丁寧に説明してくれて、母の肌の状態を専用の機械で分析したりしてた。

ヒト幹細胞を使った治療って、注射だったり、美容液みたいな形で使ったり、色々な方法があるみたい。母の場合は肌に塗るタイプのものと、たまに注射を組み合わせてるって言ってた。最初は半信半疑だったけど、3ヶ月くらい経った頃から、母の肌が少しずつ変わってきたのが私にも分かった。

朝、洗面所で母と並んで歯を磨いてる時、ふと気づいたんだ。母の頬が前よりふっくらしてる。光の加減かなって思ったけど、よく見ると本当に肌の質感が変わってた。

再生医療の面白いところは、外から何かを足すんじゃなくて、体が本来持ってる力を引き出すってところ。化粧品で隠すんじゃなくて、細胞そのものに働きかける。なんというか、根本的なアプローチなんだよね。

母は今も月に一度クリニックに通ってる。「鏡を見るのが怖い」って言ってた人が、最近は朝の支度に時間をかけるようになった。別に劇的に若返ったとかそういう話じゃないんだけど、本人が前向きになれたのが一番大きい変化かもしれない。

ヒト幹細胞再生医療って、まだまだ発展途上の分野らしくて、これから色んな可能性が広がっていくんだろうな。私自身はまだ若いから実感ないけど、いつか自分も母くらいの年齢になった時、この技術がもっと身近なものになってたらいいなって思う。

窓の外では秋の風が吹いてる。来月また母とクリニックに行く約束をした。今度は待合室でコーヒーでも飲みながら、もう少し詳しい話を聞いてみようかな。

組織名:合同会社ニクール / 役職名:代表社員 / 執筆者名:蘭義隆