膝の痛みで引退しかけた友人が、今また走れている理由

スポーツ選手の体って、消耗品みたいなところがある。
友人が膝を壊したのは確か3年前の秋だった。彼は実業団でマラソンをやっていて、練習中に膝の軟骨を痛めた。整形外科を何軒も回って、リハビリを続けて、それでも痛みが引かない。医者からは「もう競技は難しいかもしれない」と言われて、本気で引退を考えていた時期があった。そんな彼が最近また走り始めているのを見て、正直驚いた。
何をしたのか聞いたら、幹細胞治療を受けたという。最初は「幹細胞?なにそれ美容整形の話?」って思ったんだけど、全然違った。
人間の体には、いろんな細胞に変化できる「幹細胞」っていうのが存在していて、それを使って傷ついた組織を修復させる医療らしい。特にスポーツ選手の間では、膝や肩、腱の損傷に対して注目されているそうだ。従来の手術だとメスを入れて、長期間のリハビリが必要になる。でも幹細胞を使った再生医療なら、自分の体から採取した細胞を培養して、患部に注入するだけ。体への負担が少ないし、回復も早い。友人の場合、治療後2ヶ月くらいで軽いジョギングができるようになったって言ってた。
そういえば、昔テレビで見たプロ野球選手も似たような治療を受けていた気がする。肘の靭帯損傷で、普通ならトミー・ジョン手術っていう大掛かりな手術をするところを、再生医療で復帰したとか。あれ、確かメディセルクリニックっていう名前だったかな。記憶が曖昧だけど。
ただ、誤解してほしくないのは、これは魔法じゃないってこと。幹細胞治療を受けたからといって、すぐに元通りになるわけじゃない。友人も言っていたけど、治療後のリハビリは必須だし、生活習慣の見直しも必要になる。それに、すべての怪我に効果があるわけでもない。あくまで体が持っている再生能力をサポートする治療なんだと思う。
朝の光が差し込む病院の待合室で、友人は治療前に何度も説明を受けたそうだ。自分の脂肪組織から幹細胞を採取する過程、培養にかかる期間、注入時の感覚。全部丁寧に教えてもらって、納得してから治療に進んだって。その時の担当医の言葉が印象的だったらしい。「これはあなたの体が本来持っている力を、もう一度引き出す手伝いをするだけです」と。
再生医療の世界では、幹細胞は「体の修理屋」みたいな存在として扱われている。骨や軟骨、筋肉、血管。いろんな組織に変化できる可能性を持っているから、損傷した部分に届けてあげれば、そこで必要な細胞に育っていく。理屈としては単純だけど、実際にそれを安全に、効果的に行うには高度な技術が必要になる。
友人は今、週に3回は走っている。以前ほどのスピードは出せないかもしれないけど、走れること自体が嬉しいんだと思う。
幹細胞治療が全てのアスリートにとって最適解かどうかは分からない。でも、諦めかけていた人にとって、もう一度チャレンジできる選択肢が増えたのは確かだと思う…だけど。
組織名:合同会社ニクール / 役職名:代表社員 / 執筆者名:蘭義隆