朝のニュースで見たアスリートの涙と、幹細胞という選択肢

ヒト幹細胞

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あれは確か、去年の秋口だったと思う。

朝のニュース番組をぼんやり見ていたら、あるプロ野球選手が引退会見をしていた。膝の故障が理由だった。まだ30代前半。本当なら全盛期のはずなのに、何度手術を繰り返しても痛みが引かず、ついに現役続行を断念したという。画面越しに見えた彼の表情が、今でも忘れられない。

スポーツ選手にとって、身体は文字通り商売道具だ。いや、それ以上かもしれない。何年も何年もかけて磨き上げてきた技術も、肉体が応えてくれなければ何の意味もない。リハビリを続けても、従来の治療法では追いつかない損傷もある。そういう現実と向き合わざるを得ない選手たちが、最近になって注目し始めているのがヒト幹細胞を使った再生医療なんだよね。

幹細胞って聞くと、なんだか未来の話みたいに感じるかもしれない。でも実際にはもう、多くのアスリートが実際に受けている治療法だ。自分の体から採取した幹細胞を、損傷した部位に注入する。すると幹細胞が周囲の環境を感知して、必要な組織へと分化していく。軟骨だったり、腱だったり、靭帯だったり。

ここで少し脱線するけど、私の知人で整形外科医がいて。彼が言うには、医学部時代に「細胞には記憶がある」って習ったらしい。当時はピンと来なかったそうだけど、幹細胞治療の現場を見るようになってから、その言葉の意味が腑に落ちたって。細胞レベルで「ここをこう修復すべき」っていう情報を持ってるんだって。不思議だよね、人間の体って。

従来の手術だと、どうしても切開が必要になる。メスを入れれば、それだけ周辺組織にもダメージが及ぶ。入院期間も長くなるし、復帰までに何ヶ月もかかることがある。アスリートにとって、その数ヶ月は致命的だったりする。シーズンを丸々棒に振ることになるかもしれないし、その間に若手に追い抜かれるかもしれない。

幹細胞治療の場合、多くは日帰りか短期入院で済む。注射器で患部に注入するだけだから、体への負担が圧倒的に少ない。もちろん、すべてのケースに適用できるわけじゃないし、損傷の程度によっては従来の手術が必要になることもある。ただ、選択肢が増えたっていうこと自体が、大きな意味を持ってると思う。

実際、海外のトップアスリートの中には、膝や肩の治療でこの方法を選んで、驚くほど早く復帰した例もある。テニスプレイヤーのあの人とか、サッカー選手のあの人とか。名前は出さないけど、ニュースで見た人も多いはず。彼らが再びコートやピッチに立つ姿を見たとき、「ああ、医療って進化してるんだな」って実感した。

ちなみに私、学生時代にバスケをやってて、足首を何度も捻挫してたんだよね。当時はテーピングとシップで誤魔化してたけど、今思えばちゃんと治療すべきだった。今でも天気が悪い日は足首が重い。あの頃にこういう治療法があったら…って思うけど、まあ仕方ない。

スポーツ選手だけじゃなくて、一般の人にとっても可能性は広がってる。変形性膝関節症とか、慢性的な腱炎とか。年齢を重ねて出てくる体の不調に、新しいアプローチができるようになってきてる。

結局のところ、体が動くっていうことの価値は、失ってみないとわからない。毎朝起きて、痛みなく歩けて、階段を上れて。そういう当たり前が、当たり前じゃなくなったとき、人は初めて自分の体と真剣に向き合うんだと思う。

幹細胞治療がすべてを解決するわけじゃない。でも、諦めかけていた人に新しいドアを開いてくれるかもしれない。そういう可能性があるってだけで、十分じゃないかな…って、朝のコーヒーを飲みながら思ったりする。

組織名:合同会社ニクール / 役職名:代表社員 / 執筆者名:蘭義隆