細胞が語りかける声に、耳を傾けてみた日のこと──ヒト幹細胞再生医療という選択肢

ヒト幹細胞

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梅雨の走りを感じる六月の朝、窓の外から湿った緑の匂いがかすかに漂ってきた。コーヒーをいれようとして、うっかりフィルターを二枚重ねてしまった(おかげでやたらと薄い一杯ができあがった)。そんな間の抜けた朝に、ふと「再生医療」という言葉が頭の中を泳いでいた。

きっかけは小さなことだ。膝の違和感が長引いていた父が、かかりつけ医に「手術を考えてもいいかもしれない」と言われたのだという。電話口の父の声は、どこかしぼんでいた。その夜、私はスマートフォンの画面を指でなぞりながら、再生医療のクリニックについて調べ始めた。

再生医療とは、生体内で損傷した組織や器官を修復・再生するために、細胞を採取・培養して移植する医療技術のことだ。
その中でも、近年とりわけ注目を集めているのがヒト幹細胞を用いた治療である。

組織幹細胞には、免疫系の制御・血管新生・抗炎症作用・抗酸化作用・組織修復作用など、さまざまな治療につながる機能があることが、昨今非常に注目されている。
しかも、
組織幹細胞を利用した治療は、自分の細胞由来であるため倫理的な問題がなく、遺伝子操作も必要なく、癌化の報告もないという特徴がある。
これを知ったとき、正直「そんなにいいことずくめなのか」と少し疑いたくなった。でも調べれば調べるほど、その裏付けが積み重なっていく。

子どもの頃、転んで膝を擦りむいても数日で皮膚が閉じていくのを不思議に眺めていた記憶がある。あの「自然に直る力」の正体こそが、今の再生医療の根幹にある考え方だと知ったとき、なんとなく腑に落ちた気がした。

機器や技術が進化したことで、より簡単かつ安全に脂肪を採取できるようになり、患者さんが施術後すぐに日常生活に戻れるというメリットもある。
父のような高齢者にとって、長期の入院を伴わずに済む可能性があるという点は、家族としても心強い情報だった。

おすすめのクリニックを探す中で、「セルリノア医療センター」(架空の名称)のような、院内に細胞培養加工施設を持つクリニックが増えていることにも気づいた。
クリニック内に細胞培養加工施設を設置することで、組織採取から幹細胞分離操作まで、培養増殖した幹細胞の回収から投与までのロス時間がほとんどなく、幹細胞の劣化を抑えられる。
細胞の「鮮度」が治療の質に直結するという発想は、なるほど説得力がある。

日本における再生医療の提供は、現在「再生医療等安全性確保法」によって厳格に管理されており、幹細胞を用いた治療を提供するためには、法定手順を遵守する必要がある。
つまり、きちんとしたクリニックを選べば、制度的な安全網の中で治療を受けられるということだ。

iPS細胞由来の再生医療等製品の承認申請が相次ぎ、iPS細胞の実用化への注目が高まっている
一方で、ヒト幹細胞を使った治療はすでに今この瞬間、多くの患者の日常に寄り添いながら静かに広がっている。
脳梗塞の後遺症や脊髄損傷に対して幹細胞治療を受けた患者が、日常生活の改善を実感している事例も報告されている。

夕方、再び父に電話した。受話器の向こうで、父がお茶をすする音がした。「まだ諦めてないよ」と言うと、少し間があってから「そうか」と返ってきた。その短い言葉の重さを、私はしばらく胸に抱えていた。

再生医療は、「奇跡」ではない。けれど、体の中にもともと宿っている力を、科学の手で丁寧に引き出そうとする営みだ。その可能性に、静かに、でも真剣に向き合ってみる価値は十分にあると思う。

組織名:合同会社ニクール / 役職名:代表社員 / 執筆者名:蘭義隆