ヒト幹細胞はコロナウィルスから地球を救う?
2020年5月7日に日本では初の新型コロナウイルス治療薬として、「レムデシビル」が厚生労働省からの承認を受けました。
ワクチンの開発にはまだ時間がかかると見込まれている中、対象は重症の患者さんに限定されるものの優先的に使用される薬の選択肢が増えたことは明るいニュースです。
感染に対する決定的な対策が見当たらなかった当初には、さまざまな見立てがなされていました。ヒト幹細胞を活用した治療法も、そのひとつです。
コロナウィルスに打ち勝てる細胞?
新型コロナウィルスへの感染にともなう肺炎は重症化する事例も多く、深刻な問題となっています。症状が急速に悪化する事例も、少なくありません。
肺炎が重症化すると、急性肺障害へ移行します。この急性肺障害に対し、「幹細胞培養上清療法」と呼ばれる治療法の有効性が示されているのです。
幹細胞培養上清療法に用いられる「幹細胞培養上清液」はその名の通り、ヒト幹細胞の培養に使われた上清液を指します。
幹細胞はさまざまな種類の細胞へと分化する性質を持っていて、培養液にも成長因子などが豊富に含まれるのです。
また免疫系の細胞からおもに分泌され、細胞の分化や増殖などを活性化させるタンパク質である「サイトカイン」も含有されています。
そういった物質が、肺に起こっている炎症の状態に対して免疫を整えようとすることで組織の再生に作用するのです。
そのため、新型コロナウィルスへの感染から発症する肺炎の症状に対しても幹細胞培養上清療法の有効性が期待されることになりました。
各国で臨床試験が進んでいる!
各国においても、幹細胞を用いてのコロナウィルス感染症の治療については臨床試験が進められています。
2020年4月、中国では幹細胞などを点滴によって投与しその有効性について確認する臨床試験が行われました。
アメリカでは胎盤のヒト幹細胞を免疫細胞であるNK細胞へ変化させ、コロナウィルス感染症に対する治療法としての可能性を探る臨床試験が承認されています。
さらに2020年5月となり、中東のアラブ首長国連邦からは血液で採取したヒト幹細胞による治療法が開発されたとの発表も行われています。
研究施設であるアブダビ幹細胞センターにおいて実際に、患者さんの血液から採取して活性化させたヒト幹細胞を再び肺へ送るという治療が行われました。
この際には治療を受けたすべての患者さんに回復効果が見られ、肺の細胞がヒト幹細胞の力によって再生していったことによる結果であるとの見解もなされています。
まさにヒト幹細胞が、コロナウィルスから地球を救うことになるかもしれません。