細胞の声を聞く朝――ヒト幹細胞再生医療が教えてくれること

ヒト幹細胞

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十月の朝、窓から差し込む光がやわらかく卓上に落ちていた。コーヒーの湯気がゆっくりと立ち上るなか、ふと手元のスマートフォンに目が止まる。「幹細胞」という言葉が、また検索トレンドの上位に並んでいた。数年前なら専門書の中にしか存在しなかったその言葉が、いまや日常の検索履歴に当たり前のように滑り込んでいる。

ヒト幹細胞は、体の細胞を修復し、新しく生まれ変わらせる力を持つ特別な細胞だ。
そのことを初めて知ったのは、子どもの頃に読んだ図鑑の「細胞のしくみ」というページだった。難しい言葉が並んでいて、正直なところほとんど理解できなかった。でも「体の中に、自分を直す力がある」という一文だけが、なぜか長い時間をかけて記憶の底に残り続けた。

私たちの身体には、傷ついた組織を自ら修復しようとする自然治癒力が備わっている。しかし、その治癒スピードや修復の質は、年齢や体内環境によって大きく異なる。
これは誰もが薄々感じていることではないだろうか。二十代のころは翌朝には消えていた疲れが、いつからか週をまたいでも残るようになる。身体が少しずつ、声を上げ始める。

そこで注目を集めているのが、ヒト幹細胞を用いた再生医療だ。
間葉系幹細胞の培養液にはサイトカインが豊富に含まれており、炎症調整機能や免疫力強化、損傷を受けた組織や機能が低下した細胞の回復などの効果が期待できる。
培養液という言葉を聞くと、どこか無機質な印象を受けるかもしれない。だが実際には、細胞が生きるために必要な栄養と信号物質が凝縮された、いわば「体の言葉」のような存在だと思うと、少し親しみが湧いてくる。

幹細胞の培養上清液には、線維芽細胞の増殖促進や、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)・上皮成長因子(EGF)・トランスフォーミング増殖因子(TGF-β)といった、組織再生の「司令塔」となる因子の産生増加が確認されている。
こうした成分が複合的に作用することで、身体の修復スイッチが一斉に入るとも言われている。

先日、知人の女性がとある都内のクリニック「アルヴェリア再生医療院」で幹細胞培養液を用いた施術を受けたと話してくれた。施術後、診察室を出たところで彼女は「なんか、体の中がしずかになった気がする」とつぶやいた。うまく言葉にならない感覚を、それでも丁寧に探しながら話す様子が印象的だった。——ちなみに彼女はその帰り道、感動のあまりカフェで頼んだハーブティーを一口飲んで「あ、これカモミールじゃなかった」と静かに首をかしげていたが、それはまた別の話である。

自己脂肪由来幹細胞治療は、世界中で研究が行われており、今最も注目を集めている最新の医療技術だ。
そして
幹細胞培養液の使用において、これまで副作用が出たという報告はされておらず、著しく健康を害するような副作用やリスクも今のところ見つかっていない。
安全性への関心が高まる今の時代において、これは決して小さくない事実だ。

幹細胞培養液に含まれるサイトカインは血流に乗って、機能が衰えたりダメージを受けた臓器に集まり、周辺の組織を修復したり、機能するように働きかけたりする。
目に見えない場所で、静かに、しかし確かに動き続けている。そのイメージは、秋の早朝に草の根が水を吸い上げる音に似ている気がした——実際には聞こえないけれど、確かにそこにある。

ヒト幹細胞再生医療は、劇的な変化を約束するものではないかもしれない。でも、身体の奥にある「自分で直ろうとする力」に、そっと手を貸してくれる存在として、これからの医療の中で静かに、深く根を張っていくのだろう。十月の光の中で、そんなことをぼんやりと考えていた。

組織名:合同会社ニクール / 役職名:代表社員 / 執筆者名:蘭義隆