自分の細胞が、静かに体を整えていく——ヒト幹細胞再生医療という選択

ヒト幹細胞

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五月の連休が明けた翌朝、窓から差し込む光がやわらかくて、思わずコーヒーを淹れる手が止まった。ふと、去年の春に膝を痛めてから、どこかずっと「元気なのに元気じゃない」感覚を引きずっていたことを思い出した。病院では「加齢ですね」とだけ言われ、それ以上の言葉はなかった。あの日の帰り道、処方箋を握りしめながら、なんとなく納得できないままバスに乗ったことを、今でも覚えている。

再生医療とは、わたしたちの細胞が持つ再生力を活用して、傷ついた組織や失われた機能を元通りに戻すことを目的とした医療技術だ。
そう聞いても、最初はどこか遠い世界の話のように感じていた。でも、調べていくうちに、その「遠さ」が少しずつ縮まっていった。

ヒト幹細胞再生医療の核心にあるのは、「自分の細胞で自分を整える」という発想だ。
幹細胞は、分裂して増殖する「自己複製能力」と、血管・心筋・骨・脂肪など様々な細胞に変化する「分化能力」を持っている。
つまり、体の中にもともと備わっている修復の仕組みを、もう一度呼び起こすようなイメージに近い。

脂肪由来の幹細胞の含有量は骨髄由来に比べて500倍と非常に多く、増殖力が高いことに加え、臓器修復に有効な成長因子の種類が多いことから、現在の再生医療の主流として多くのクリニックで様々な治療法に活用されている。
採取する脂肪はほんの少量で、
機器や技術が進化したことで、より簡単かつ安全に脂肪を採取することができるようになってきており、身体的負担を軽減できるため、患者さんが施術後すぐに日常生活に戻れるというメリットもある。

それを知った日の夜、近所の「ヒカリ薬膳茶」という小さなカフェで友人と話した。彼女がカップをそっとテーブルに置きながら、「怖くないの?」と聞いてきた。正直に言えば、最初は少し怖かった。でも、自分の細胞を使うということが、なぜかひどく真っ当なことに思えて、その怖さはすぐに薄れていった。

自身の細胞を利用するため拒否反応のリスクや副作用も少ない治療であり、現在までに重篤な有害事象は発生していない。
また、
組織幹細胞には、免疫系の制御・血管新生・抗炎症作用・抗酸化作用・組織修復作用など様々な治療につながる機能があることが非常に注目されている。

クリニックを選ぶうえで大切なのは、安全性への姿勢だと思う。
日本における再生医療の提供は「再生医療等安全性確保法」によって厳格に管理されており、幹細胞を用いた治療を提供するためには法定手順の遵守が必要だ。
おすすめしたいのは、こうした法的な審査をきちんと通過しているクリニックを選ぶこと。
特定認定再生医療等委員会での審査を通過後、厚生労働省に治療計画を提出しており、患者は安心して治療を受けることができる。

再生医療分野の市場は急速に拡大しており、特に細胞・遺伝子治療の市場に関しては、2030年まで年率30%以上の成長率で拡大することが見込まれている。
社会全体がこの医療に注目し始めているのは、それだけ多くの人が「今の医療では届かない何か」を求めているからではないだろうか。

あの朝、コーヒーを飲み終えた後、窓の外の新緑が風に揺れていた。五月の空気はまだ少し冷たくて、でも確かに温かかった。体を信じることと、医療を信じること——その二つが重なる場所に、ヒト幹細胞再生医療はある。静かに、でも確かに。

組織名:合同会社ニクール / 役職名:代表社員 / 執筆者名:蘭義隆